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【萌芽大輪篇】 第五話
ライアス合金……
控えめな鈍色の光沢を放つその金属は、どんな鋼よりも強靭であり、薄く延ばせば羽根のように軽くなり、そして塩水は勿論の事、強力な酸やアルカリに浸しても決して朽ちることがないといわれている“伝説上の物質”である。
ライアスとはガルマニア語で、“不老”という意味であり、古代ヴェストリア語の“レムリウス(永遠なるもの)”を語源とする言葉で、それに言及する最古の記録は神教の“聖典”である。聖典は大陸各地に点在する諸民族の言葉にその都度で翻訳されているが、原典は古代ヴェストリア語で記載されていた。古代ヴェストリア語は現存する言葉の中でも最古のものであり、その起源は“紀元前”、すなわち森羅万象の神が創造した“愚者”が“宿業の炎”を七度鎮めようとしていた時代まで遡る事が出来る。
聖典曰く、
レムリウス(※ ライアス合金)は森羅万象の神がまとう衣より生まれた。
ある時、神は着衣の解れを見つけられ、新たなお召し物を仕立てられた。古き衣をかまどにくべるようにと神はモメマモス(※ 商い、貨幣の妖精)を召してそれをお命じになった。モメマモスは煤けたかまど場で自身の着衣が汚れることを厭い、替わりにフォスター(※ 狐の妖精)に黄金を見せ、「お前が私の替りにこの衣をかまどにくべるならばこれをお前にやろう」と言った。
黄金に目がくらんだフォスターはモメマモスより衣を引き取った。しかし、フォスターはフォイアノン(※ かまどの妖精)と仲が悪かったため、近くを通りがかったファウラ(※ 花の妖精)に「神がお前にこの衣をかまどにくべるようにおっしゃっていた」と嘘を言った。
ファウラは「神が私のような小さく力のない者にそのような無理をお命じになるはずはない」と言ったが、フォスターは言葉巧みにファウラを説き伏せ、ついにファウラはしぶしぶこれに応じた。しかし、ファウラはかまどの火が怖かった。かまど場の入り口に立ち尽くしていたファウラだったが、意を決して衣をかまどに向かって放り投げたところ、衣はかまどの手前にひらひらと落ちてしまった。轟々と火が上がるかまどに近付くことが出来ないファウラは泣き出した。
その声をかまど番(※ 世界が炎に包まれる前なので賢者と見なされている)が聞き、自分がかまどの中に入れると言ってファウラをなだめた。ファウラは喜び、かまど番に礼を言って姿を消した。その後、かまど番はすっかり擦り切れていた自分の着衣をかまどにくべ、替わりに神の衣を家に持ち帰って新しい服を作ることにした。
かまど番は織物の解れを紐解くがごとくに分け隔てたところ、それがレムリウスで作られた糸で紡がれている事に気がついた。しかし、かまど番がいくら糸のもつれを解こうとしてもレムリウスは互いに強く結びつき、如何なる薬も力も寄せ付けなかった。既に自分の衣を灰にしてしまっていたかまど番は途方にくれたが、すぐにサラマンダ(※ 火の妖精)の元を訪れて言った。
「サラマンダよ。どうかこの強靭なる糸のもつれを焼き切って欲しい」と。素裸で体中が煤けているかまど番をサラマンダは大いに嘲笑して相手にしなかった。一計を案じたかまど番は「そうか。お前にもこの糸を焼くことは出来ないのだな。だからお前は私を無視するのだ。お前は臆病者だと地上で私は触れて回ろう」と言った。サラマンダは大いに怒り、「神の下僕風情が我を侮るか。よかろう。ならば我が炎の力をとくと見るがよい」と言って忽ちの内にこれを焼き切った。
かまど番はこのときサラマンダの放った炎を松明に移して自分の家に持ち帰った。かまど番はレムリウスの糸から純粋なレムリウスだけを取り出そうと知恵を巡らし、サラマンダの火に巻き取った糸の全てをくべ、更に瘴気の沼地より産する白灰と合わされて昼夜を分かたず燻すと鈍色の丸薬のごとき塊を成した。この塊は金属でありながら羽根のように軽く、そして柔らかかったが決して朽ちる事も千切れることもなかった。サラマンダの火にくべれば飴のように溶けるため、かまど番はこれを大いに喜んだのである。
神秘聖典 -神代の章-
かまど番に騙されて火を盗まれたことを知ったサラマンダが怒り狂って地上をことごとく焼き尽くすのはこの後の事とされている。故に、敬虔な神教の教徒の中にはライアス合金を“古の民”が残した忌むべき“原罪の象徴”と見なす向きもあり、人々の間では長らく“伝説上の物質”であり続けた。
だが……
ライアス合金は実在していたのである。
控えめな鈍色の光沢を放つその金属は、どんな鋼よりも強靭であり、薄く延ばせば羽根のように軽くなり、そして塩水は勿論の事、強力な酸やアルカリに浸しても決して朽ちることがないといわれている“伝説上の物質”である。
ライアスとはガルマニア語で、“不老”という意味であり、古代ヴェストリア語の“レムリウス(永遠なるもの)”を語源とする言葉で、それに言及する最古の記録は神教の“聖典”である。聖典は大陸各地に点在する諸民族の言葉にその都度で翻訳されているが、原典は古代ヴェストリア語で記載されていた。古代ヴェストリア語は現存する言葉の中でも最古のものであり、その起源は“紀元前”、すなわち森羅万象の神が創造した“愚者”が“宿業の炎”を七度鎮めようとしていた時代まで遡る事が出来る。
聖典曰く、
レムリウス(※ ライアス合金)は森羅万象の神がまとう衣より生まれた。
ある時、神は着衣の解れを見つけられ、新たなお召し物を仕立てられた。古き衣をかまどにくべるようにと神はモメマモス(※ 商い、貨幣の妖精)を召してそれをお命じになった。モメマモスは煤けたかまど場で自身の着衣が汚れることを厭い、替わりにフォスター(※ 狐の妖精)に黄金を見せ、「お前が私の替りにこの衣をかまどにくべるならばこれをお前にやろう」と言った。
黄金に目がくらんだフォスターはモメマモスより衣を引き取った。しかし、フォスターはフォイアノン(※ かまどの妖精)と仲が悪かったため、近くを通りがかったファウラ(※ 花の妖精)に「神がお前にこの衣をかまどにくべるようにおっしゃっていた」と嘘を言った。
ファウラは「神が私のような小さく力のない者にそのような無理をお命じになるはずはない」と言ったが、フォスターは言葉巧みにファウラを説き伏せ、ついにファウラはしぶしぶこれに応じた。しかし、ファウラはかまどの火が怖かった。かまど場の入り口に立ち尽くしていたファウラだったが、意を決して衣をかまどに向かって放り投げたところ、衣はかまどの手前にひらひらと落ちてしまった。轟々と火が上がるかまどに近付くことが出来ないファウラは泣き出した。
その声をかまど番(※ 世界が炎に包まれる前なので賢者と見なされている)が聞き、自分がかまどの中に入れると言ってファウラをなだめた。ファウラは喜び、かまど番に礼を言って姿を消した。その後、かまど番はすっかり擦り切れていた自分の着衣をかまどにくべ、替わりに神の衣を家に持ち帰って新しい服を作ることにした。
かまど番は織物の解れを紐解くがごとくに分け隔てたところ、それがレムリウスで作られた糸で紡がれている事に気がついた。しかし、かまど番がいくら糸のもつれを解こうとしてもレムリウスは互いに強く結びつき、如何なる薬も力も寄せ付けなかった。既に自分の衣を灰にしてしまっていたかまど番は途方にくれたが、すぐにサラマンダ(※ 火の妖精)の元を訪れて言った。
「サラマンダよ。どうかこの強靭なる糸のもつれを焼き切って欲しい」と。素裸で体中が煤けているかまど番をサラマンダは大いに嘲笑して相手にしなかった。一計を案じたかまど番は「そうか。お前にもこの糸を焼くことは出来ないのだな。だからお前は私を無視するのだ。お前は臆病者だと地上で私は触れて回ろう」と言った。サラマンダは大いに怒り、「神の下僕風情が我を侮るか。よかろう。ならば我が炎の力をとくと見るがよい」と言って忽ちの内にこれを焼き切った。
かまど番はこのときサラマンダの放った炎を松明に移して自分の家に持ち帰った。かまど番はレムリウスの糸から純粋なレムリウスだけを取り出そうと知恵を巡らし、サラマンダの火に巻き取った糸の全てをくべ、更に瘴気の沼地より産する白灰と合わされて昼夜を分かたず燻すと鈍色の丸薬のごとき塊を成した。この塊は金属でありながら羽根のように軽く、そして柔らかかったが決して朽ちる事も千切れることもなかった。サラマンダの火にくべれば飴のように溶けるため、かまど番はこれを大いに喜んだのである。
神秘聖典 -神代の章-
かまど番に騙されて火を盗まれたことを知ったサラマンダが怒り狂って地上をことごとく焼き尽くすのはこの後の事とされている。故に、敬虔な神教の教徒の中にはライアス合金を“古の民”が残した忌むべき“原罪の象徴”と見なす向きもあり、人々の間では長らく“伝説上の物質”であり続けた。
だが……
ライアス合金は実在していたのである。
第五話 人生いろいろ、男もいろいろ
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